01:世界は平和だった

3/3
前へ
/3ページ
次へ
「ジェーム、お前な」  少年は倒れている相手を見下ろして、口を歪めた。 「ひ……許して、クレイル。クラスメイトだろ、親友だろ!? 表紙のサラぴょんが俺を呼んだんだよ」 「お前な……」  少年クレイルは、飛び上がって土下座するジェームの目線にしゃがみ込み、にらみつける。 「風俗雑誌は18歳になってからだよ、はあと。ってサラぴょんも言ってるだろうが!! ボクだってまだ16だから我慢してるのに、お前が先にサラぴょんに手を出しやがって!!」  クレイルは胸倉をつかんで揺さぶる。しばらく揺さぶってると青い顔をした、本屋の店主が駆け寄って来た。 「もう、もう大丈夫ですから! それくらいで」  クレイルが気付くと、ジェームは揺さぶられすぎて泡を吹いて気を失っていた。 「ありがとうございました」  頭を下げる店主に、クレイルは微笑みかける。 「たまたまですよ。こいつは寮に連れて帰ります」  ジェームを立たせて、クレイルは歩き去った。  本屋から遠ざかり、ジェームを激しく地面に叩き付ける。 「クレーイルッ!! 何すんだよ!!」 「何って? 腹いせだよ。面倒臭いのに、わざわざ本を買いに行ったのに買い損ねたじゃねーかよ!!」  クレイルはジェームを殴り、ぶーっと頬をふくらませた。 「あーあ、やっぱり部屋でネットショッピングが一番楽だ。アムゾンで本は買おう。あーあ、面倒臭い」  ぶつぶつと言うクレイルをジェームは冷たい目で見て、そのまま一緒に学校の寮へと戻ることにした。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加