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このまま此処でじっとしてるわけにはいかない。兎に角、此処が何処でどんな所なのか知る必要がある。 「伊織、少し歩いてみよう。」 そう声をかけると頼りなく頷いて腕にしがみついてきた。不安だよね?あたしもそうだ。 しばらく道なりに歩いてみた。すでに辺りは陽が暮れて薄暗くなっていた。人の通りはなくて、木造の民家には僅に灯りが浮き上がる程度だ。 人通りがなければ話を聞くこともできない。あたしは近くにあった民家に立ち寄る事にした。 「彼処の家の人に話し聞いてくるから、伊織は此処で待ってて?」 「蓮ちゃんっ……」 「大丈夫だから!」 心細そうにする伊織を宥め、あたしはすぐ脇にあった民家に向かった。家の前に立ち、戸板に手を掛けた時だ…… 「きゃあっーー」 伊織の悲鳴が聞こえて、あたしはすぐに振り返った。薄暗い中でも大して離れてはいなくて何が起きたのか分かる。伊織の身体を後ろから捕まえる男の姿が映る。その周りにも男達が数人。 「妙な格好で彷徨きやがって、怪しいやつめ!」 「やだぁっ、離して!蓮ちゃん、蓮ちゃん助けてぇ……」 怒鳴り声を挙げているのは周りの男達。伊織はパニック状態で泣きながらあたしに助けを求めている。 「伊織っーー」 考える間もなく、あたしは伊織を捕まえている男達のもとへ走っていた。だけどーー 「動くな……」 その冷たい一声でピタリと足を止められてしまった。声だけじゃない。薄暗い中で、僅に見えた刃物の輝き。喉元に突き付けられた金物の温度に、あたしは動けなくなっていた。
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