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中学校三年生ともなれば好きな人の一人いても可笑しくないのに。
私は色恋に疎いらしい。
「ひなたはお子ちゃまだねぇ」
「…お子ちゃまかぁ」
そうやって、いつもからかう同級生がいたのを思い出す。ズバッと吐き出す棘に泣かされた女の子はたぶん三桁いってる気がする。
校庭でサッカーをする男子の声は屋上にいても聞こえて私は恋話まで聞こえるんじゃと口におにぎりをいれて閉じる。
好きな人とかつき合うとか私には無理だよ。
恥ずかしがり屋の私は沸騰して倒れてしまう。
私はぼんやり晴れ渡った空を見上げた。白い雲が綿飴みたいだ。
「何間抜け面してんの」
本を抱えて歩いていた私は慌てて振り返った。
そのため長い三つ編みが彼に当たり、パチンと音を立てた。
「あ、あ…夾君!ご、ごめんね!」
「…別に、あんた本当に髪長いよね」
同級生の夾君は私の三つ編みを掴むと呆れたように息を吐いた。
そう彼こそが私をいつもからかってくる同級生。無口な方なのに帰国子女特有のズバッと毒を吐き出す彼。整った顔だから余計冷たく見えて泣く子も多いのだ。
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