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「す…すみ…ませ…ん…」
私ははっきり言って夾君が苦手だ。彼に見られていると体温が上がり上手く喋れなくなる。今だって触れているのは髪なのに凄く熱くなる。
何を言えばいいのか分からなくって顔もあまり見れないし。
「…別に、悪いとは言ってない。掴みやすいから良いんじゃない?」
「……あり…がと…」
誉められてるのか分からない言葉にとりあえずお礼を言って頭を下げた。
「…それ、返しに行くの?」
彼は私が抱えていた本を見て呟いた。私は取りあえずその通りなので頷くと歩き出した。
捕まれていた髪はするりと放されて寂しそうに揺れた。
「…えっ…と」
会話が終わったのか首を傾げていると夾君は早く行くよと少し不機嫌そうに呟いた。
「あ、はい…!」
私は慌てて彼の後ろに歩いた。少し空いた距離は広くも狭くもない。
夾君は必要な事以外は話さない。
私も話すの苦手だけど彼と私の言葉のタイプは違うと思う。
でも、放課後なのに部活はいいのかな。彼は確かテニス部だったはずだ。友人達と一緒に見た時、同じ中学生とは思えないほど凄かったのを覚えてる。
運動音痴の私にとっては彼の動きは動物みたいだった。
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