3人が本棚に入れています
本棚に追加
夾君の視線が痛い。きっと早くしろって言われる。
諦めようと私が手を引っ込めると代わりに伸びた手が本を掴んだ。
「ほら」
夾君は私に本を手渡した。私は彼と受け取った本を見比べた。
「それだろ」
「…うん…」
「自分のチビさ加減把握しなよ」
彼は本を奪うと貸出手続きをし始めた。
「…ありがと…」
赤い顔でお礼を言うと彼ニヤリと笑った。からかう時彼はいつもこんな顔をする。
「気付いてないみたいだけど今日って図書室休み」
「え!」
私は慌てて図書室の壁に掛かったカレンダーを見た。今日は水曜日。図書室の休みの日だった。
「え、あ」
「あんたって本当に間抜けだよね。転ぶし。鈍いし」
あぁ、もう何がなんだか分からない。
「…なんで夾君はここにいるの?」
今日が休みなら夾君は何でいるのか分からなかった。
私は彼の視線で熱くなっている頭で必死に考えるけど、お手上げだ。
夾君はニヤリと笑ったまま私に近づいてきて、私はゆっくり後ずさった。
後ずされば背中にぶつかったのは本棚。逃げ場が無くなった私の視界には彼しかいない。
「さて、何でだろうね」
彼は意地悪そうに呟いて私に本を手渡した。
最初のコメントを投稿しよう!