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可愛い花
――立派になれ。
おまえはこの家の家業を継ぐ、唯一の後継者なのだ。
泣き虫の、まだ小学校にも上がらぬ娘に、父はそう言い放った。
泣き虫で、痛いことが嫌いで、怖いことが嫌いで、すぐにでも母の許へ駆けて行きたい――そんな弱虫の娘に。
そんな父が薄情だとも思う日はあった。
けれど、父はこの血を絶やさぬためにと娘に辛く当たった。
自分も、この家業がとても大事なことなのだと理解していたから、父の言うことはしっかり聞いた。
それでも、怖くて、痛かった。
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