可愛い花

3/19
40人が本棚に入れています
本棚に追加
/356ページ
――切り捨てられたか、血を吸う鬼よ。無様なものだな。良い様だ。見ていて悪くない。   口悪く罵られて顔を上げれば、そこには十字架を背負う男が居た。 神父の格好をしている男だった。   自分を――自分たちを狩る者。 自分たちの中で、彼の名はとても有名だった。 彼に目を付けられれば、命はないから。   けれどこの傷はこの男に負わされたものではない。 だからなのだろう、男は笑う。   笑いたければ笑え。 そして殺せ。   そう言いすてたけれど、男は笑う事を辞めた。   ――おまえほどの者が仲間に切られたか。おまえ、我が家に来い。おまえの面倒を見てやろう。   あり得ない。 この男はバカか。 ――男の意外な言動に、目を見開いた。 けれど、彼は冗談など言っていなかった。 本気だと笑みに湛えていた。   ――おまえを養おう。血が欲しければやる、戦いたいのなら本気で相手になろう。私と共に来い。そして、おまえを捨てた一族に牙を向け。私と共に、我が家を守れ。   命令口調。 それが一番嫌いなものだった。     
/356ページ

最初のコメントを投稿しよう!