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――切り捨てられたか、血を吸う鬼よ。無様なものだな。良い様だ。見ていて悪くない。
口悪く罵られて顔を上げれば、そこには十字架を背負う男が居た。
神父の格好をしている男だった。
自分を――自分たちを狩る者。
自分たちの中で、彼の名はとても有名だった。
彼に目を付けられれば、命はないから。
けれどこの傷はこの男に負わされたものではない。
だからなのだろう、男は笑う。
笑いたければ笑え。
そして殺せ。
そう言いすてたけれど、男は笑う事を辞めた。
――おまえほどの者が仲間に切られたか。おまえ、我が家に来い。おまえの面倒を見てやろう。
あり得ない。
この男はバカか。
――男の意外な言動に、目を見開いた。
けれど、彼は冗談など言っていなかった。
本気だと笑みに湛えていた。
――おまえを養おう。血が欲しければやる、戦いたいのなら本気で相手になろう。私と共に来い。そして、おまえを捨てた一族に牙を向け。私と共に、我が家を守れ。
命令口調。
それが一番嫌いなものだった。
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