七年前の君

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「もったいない。絶対綺麗な腕だったのに」 中学三年の初夏、君の言葉。 忘れはしない。 君との思い出は、きっと一生忘れないだろう。 自ら掻き切った腕には、傷痕が数本残っている。 中学生の頃、自分は死ねばいいと切り刻んだのが始まりだ。 あれから七年。 僕は未だに、自分を傷つける行為を止められていない。 「ねぇ、もう止めよう?」 頬を涙で濡らした君が言った。 「どうやって。死ねばいいから切ってる。でも死のうと思って切ってるわけじゃない。ただ逃げてるだけ。そんな人間は死ねばいい。だから切ってる」 淡々と告げる僕に、瞳に浮かぶ涙が質を増した。 「なんでも一緒に背負うから!だからもう止めよう!」 君が僕の傷痕を力いっぱい握った。 鈍い痛みが走る。 でも、そんなことはどうでもいいんだ。 「………わかった。」 そう、約束した中学三年の冬。 君が傍にいたら、止められていたのだろうか。 今でも夢に見る君は、決して笑顔を見せてはくれない。 突然消えた君の面影を追って、僕はさまよう。 こんなにも暗い場所に、君が来ているとは思いたくない。 END
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