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「失礼します。」
少しきしんだ音と共に卓哉は勢いよく扉を開けた。
高校生ともなると職員室に入るのにためらいも感じない。
昔はあれほど緊張したオトナたちのたまり場も、今では何も感じないのだから不思議なものだ。
卓哉は職員室に入ると一旦立ち止まり、中を見渡した。目的の先生を見つけると一直線に駆け寄り声をかける。
「先生、用って何ですか?」
声をかけた先生は卓哉の声に反応し振り返った。そして言葉を返す。
「おう、いいとこに来たな。青年。」
この先生は何かの真似をしてるのだろうか。よく「青年」とか「少年」とか言う言葉を使う。かと言って卓哉にとってはどうでもいい話だ。
「このプリントを教室まで運んでくれ。」
そう言うと先生は近くの机に追いてあるプリントの束を指差した。
30センチぐらい詰まれたプリントがそこには置かれている。
「えー、またですかー?たいした量じゃないしっ。たまには自分で運んで下さいよー。」
思わず卓哉は不満をもらす。こういった雑用の度に卓哉は呼び出されていた。そしてこう返したときの先生の言い分はいつも決まっている。
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