線香花火

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  はじめは、心だけがぽつんとあって 誰かと出会って、ひとつの恋が生まれる 徐々にその想いは大きくなって、色んな想いに揺れ動く 想いが通じて、楽しい日々が始まる 周りからの目や、他者の介入、様々な困難に遭遇して壊れてしまうこともある それでも困難を乗り越えた二人は、今まで以上に熱く愛し合う けど、それは永遠じゃない 命あるもの全て終わりがあるから 櫂斗の言葉には続きがあった。 ――でも、恋の導火線に火を灯した瞬間から、それは消えることなく、想い出として残るんだ ヒトはそれを止められない。 傷付くと分かっていても、綺麗に咲いたあの瞬間を覚えているから。 今度こそ。 そう思って、再び導火線に火を灯す。 今度こそ。 「パパ!パパ!!ちゃんと持ってないと落ちちゃうよー」 五歳になる息子に叱られ、僕は現実に引き戻された。 色褪せることのないあの頃の記憶。 「‥ほんとだ、落ちちゃうとこだった」 綺麗に火花を散らす橙。 「よーし、櫂斗。どっちが長く消えないかパパと競争」 「えっ、ボクの方が先につけたのにー」 君といるこの時間が、一番の幸せだ。 ーendー
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