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直角に曲がる階段を上がった二階。 昔と何も変わらないチョコレート色の扉の前に立つ。 ここに着いたときよりも落ち着いてきてはいたものの、まだ若干息は上がったままだ。 わざと足音をさせて近づいたのは、中にいる彼女への心の準備を促すため。 このまま勢いで扉を開けてしまおうかとも思ったけれど、一度小さく息を吸い、律儀にも軽く作った拳で、二回ノックした。 上がる息のせいなのか、それとも、これから受け止めなければいけない現実への、恐怖からなのだろうか。 小気味の好い音とは真逆に、どんどんと心臓は大げさに肥大する。 予想に反して、中からの反応を待ってみても応答がない。 いない……? ここじゃないのか…… ……それならあるいは、泰地さんといる、のか…… 自虐的な予想に、胸が痛む。 それすらも、知りたくないと思う防衛本能が、この沈黙を破らせずにいた。 だけど、……彼女の気配がすると思うのは、いまだ彼女のことなら何でもわかるという自意識過剰な勘違いのせいなのか。
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