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ようやくの休みを取ってくれていたパパには申し訳なかったけれど、わたしは卒業式には出ないつもりだった。 しばらくぶりに穿いてみたスカートは、もう横のフックが届かなくなっていた。 安全ピンでなんとか留めはしたものの、やっぱりお腹の膨らみは、太ったというくらいでは誤魔化せなくなっていた。 卒業証書の授与では、卒業生全員の登壇があるうちの学校の式典。 そんな公の場で、……彼の目の届く場所で、この身体を晒すことなんて、できるわけがなかったから。 体調が悪いとママには告げ、部屋にこもっていたものの、お手洗いに降りてきたところで、会社へ行こうとしていたパパと、廊下で鉢合わせてしまった。 『……どうしたんだ……それは……』 『……え……? なに、が……?』 かろうじて引きつった笑みを浮かべるものの、パパの顔をまともには見られなかった。 すぐに踵を返し、逃げるように部屋への階段を駆け上った。
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