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『……っお前、は……、なにを……っ』 ぐっと握り潰してしまいそうな力が、掴まれた腕に加わる。 『相手は、誰だ……っ!!』 『……』 詰め寄られるというより、腕から強く引き上げられ、顔の間近でパパは大きな声を出して怒鳴った。 『まさか……ッ、……本田の息子か……ッ!?』 『……』 恐怖を煽られる怒号の中でも、彼を思わせる呼称に反応する心は、……したたかに顔を上げさせた。 そこで初めて見上げたパパの表情は、いつもの整然さを少しも残さない怒りに満ちた鬼のような顔だった。 だけど、それに物怖じすることなく、わたしは口を開いた。 『……そうよ、決まっているでしょう……  ……他に誰がいるのよ……』
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