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トンネルを抜けて山間部に入ったところから別荘に着くまで後部座席の窓を全開にして、
山々を彩る緑の群生から発せられる冷たい空気を、存分に吸い込んできた。
来年は来られないかもしれないな……
……三年生になったら、夏休み返上で受験勉強頑張らないと。
ほんとに、おんなじ大学行けなくなっちゃう。
到着した別荘の駐車場に降り立つと、強い太陽の陽射しを和らげるように、爽やかな風が木々の葉っぱの影をそよそよと揺らしていた。
来年の分まで、と目一杯に冷たい空気を吸い込んだのは、……一年前。
……まだ未来に期待を抱いていた、高校二年の夏休みだった。
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