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潤む瞳にほだされながらも、じ、とおれの影を映すそこから無理矢理視線を引き剥がし、ベッド脇の本棚の一角にあるデジタル時計を見遣る。
「何時から?」
「……」
無言の返答に、ちら、と視線を戻すと、……膨らみを諦めた頬に長い睫が影を作りながら下を向いていた。
先程とは違い、力なく肩を落とすりなに、ぐ、と胸が詰まる。
おれだって……こんな風に突き放したりなんか、したくない。
ただ不乱におれを見つめてくれる円らな瞳を、蔑ろにしたくなんかないんだ。
「……」
今はおれを見返してこない睫の向こうの瞳に、愛しさと共に競り上がってくる罪悪感。
それを浄化しようと小さく息を吐き、
「りな」
頬に添えていた手をふわふわの長い髪の後頭部へと潜り込ませて、もう一度だけ胸元へと引き寄せた。
傷付けると、分かってる。
でも、仕方ないんだ……
「外で待ってて」
「……」
罪悪感に詰まる胸が痛みを誘発させられると、……返答をしなかったりなが、小さく身を摺り寄せてくれる。
りな……
込み上げる愛しさに抗いながら、折角摺り寄ってくれた華奢な身体から、そっと手を離した。
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