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ザクッ。
そんな音が聞こえたのと一緒に、俺は背中に痛みを感じた。見れば、背中にはナイフが刺さっていた。
顔を上げると男がいた。俺は男に見覚えがあった。確か、俺の彼女――あかりに片想いしてる奴だ。
なぜここにいる――その思考に至る前に、俺は痛みで立っていられなくなり、俯せに倒れる。
あかり「か……ず……くん。カズ君!しっかりして!ねぇ、カズ君!」
あかりが倒れた俺に近づき、俺の手を握った。いつも気持ちいいぐらいの彼女の手の温もりが、今はとても熱く感じた。
「よくも……よくも僕のあかりちゃんにキスしようとしたな……」
男が俺に向かって忌ま忌ましげにそんな言葉を吐き捨てる。普通なら「だれがお前の女だ。あかりは俺の彼女だ」と、言ってやるところだが、背中に走る痛みが言葉すら発させることを許さない。できても、うなり声をあげるぐらいだ。
「さぁ、あかりちゃん……こんな奴はほっといて、僕と楽しい事しようか」
男は打って変わり、優しい、しかし何かを企んでいる声色であかりに話し掛ける。
その声色から嫌な予感がしたのだろう。あかりは後ろに後退し、俺から離れ始める。
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