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知っていると言っても、別に特別な事はない。 オレの家は、ごく普通の家庭。 恭介のとこみたいに親が社長とかって訳でもないし、両親の仲が悪いとか、片親とか、そんなのもない。 本当に普通の家庭。 でもオレは、そんな当たり前で、在り来りなモノが、嫌になってしまったんだ。 自分で言うのもアレだけど、見た目は良い方だ。 そのお陰で、黙っていても色んな人間が寄ってくる。 自分に害があると思った奴は相手にしないけど、基本来るもの拒まず、去るもの追わず。 その場が良ければそれで良い。 それがオレ。 の、はずだったのに……… 「用がないなら切る。」 『えっ!?ちょっと待ってよ!!あるんだって!!』 …………慌てる恭介なんて、めずらしいな。 「で?」 『ちょっとさぁ、生徒会室行ってくれない?』 「は?そんなとこ行って、どーすんだよ。」 『…………やっぱり聞いてないんだね。』 「だから何が………」 話しが見えなくていらついたオレの声を、恭介の声が遮った。 『この時期、結構忙しいんだよ、生徒会って。』 「……………そんな話し、聞いてない。」 言葉の意味を理解するのに30秒はかかっただろうか。 『1人でやるつもりなんだよ、久遠は。って言うか、今も1人で仕事してるよ。』 オレの心をざわつかせる、その名前……… 「…………って今!?ったく。んなとこで喋ってる暇ねぇだろ!!」 オレは、恭介の言葉を待たずに電話を切って、生徒会室へと駆け出していた。 「ハァ……ハァ………ッ……」 こんなに全力で走ったのなんて、いつ以来だろう……… 「あれっ?咲人?」 生徒会室の前に着いて、思いっ切りゼーゼーしてたら、郁人の声が聞こえた。 その声に顔を上げると、伊万里先輩に、椿、永久もいた。 気まずい…………オレが一生懸命走る姿とか……… 「え~っと………みんな、どーしたのー?」 うん、いつものオレだ。 「私達は、高柳先輩にここに来るように言われたんです。君は?」 「オレもそーっすよ。理由は……聞いてなさそうですね。取り敢えず、入りましょーか。」 オレはそう言いながら、生徒会室の扉に手をかけた。        Side・咲人・end .
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