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Side・咲人
「……………」
オレの下で、恥ずかし気もなく素肌を晒し、
(オレが脱がせたんだけど。)
鼻にかかった様な甘ったるい嬌声を上げ、
(オレが出させてるんだけど。)
オレを求めている男を、冷めた目で見下ろす。
春休みに入って数日。
こんな光景を見るのは、もう何回目だろうか………
相手にしている奴とは、付き合ってるとか、そんな関係じゃない。
ってか、名前も知らねぇし。
ただ、オレに抱いてくれと言ってきただけ。
こいつはオレに抱かれたい。
オレは欲のはけ口があればいい。
そう思っていた。
今もそう………思っている。
思っているけど……………
「…………咲人くん?」
「………あ?」
オレが突然動かなくなった事を不思議に思ったんだろう。
不意に名前を呼ばれた。
「……………」
目線をさげれば、潤んだ瞳での上目遣いに、上気した頬。
オレの身体を反応させるには十分な物が揃っているのに………
「あー………ゴメン、もう帰ってくれる?」
「え………」
オレは、目の前で呆気に取られた顔をしている奴に、服を無理矢理着せて、教室から追い出した。
あっ、ここ学校ね。
まぁ、色々と便利だからさ。
「ちょっと!!咲人くん!?」
ドアを叩く奴を無視して、カギをかけた。
ドアを叩く音がしばらく続いていたけど、ようやく諦めたのだろう、代わりに廊下を走り去っていく足音が聞こえた。
「はぁ。」
らしくない。
本当にそう思う。
これも全部…………
「…………チッ」
ポケットの中で震えた携帯のディスプレイを見て、思わず舌打ちしてしまう。
全部………こいつのせいだ。
「………んだよ。」
『あれぇ?いつものチャラさがないよー?』
「お前のせいだ………」
『えー、何の事かなぁ?』
恭介の白々しい態度に、余計に、腹が立つ。
「で、何の用だよ。」
『今、どこにいるのー?』
「…………学校。」
『ふーん…………そんな所でナニしてるのかなぁ?』
「お前さ、分かってて聞いてんだろ?」
『知らないよー、咲がナニしてるかなんてさ。』
「…………」
付き合いの長い恭介は、オレの事をよく知っている。
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