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「ぅう・・あっう・・海」
私が赤ちゃんのころ、初めての言葉らしい。
それが、なぜ海だったのだろうか・・・・
そんなことを思いながら、砂が転がるような海の音を聞いている。
おしりには柔らかな浜が眠っている。
今日は雨の色をした空気の上に、白い雲が敷き詰められている。
私はペットボトルのソーダ水を少し口にふくみ、喉に染みこませた。
気持ちは晴れないな。高校生になりたての春の海は、人気もない。だから、心が腐っていく私には、それをまぎらわすいい場所だった。
貝殻。小さなうずらの卵のようなミルク色の貝殻を見つけた。次に波がやって来たら、運び去られてしまうだろう。
私は小走りに駆け寄ると、貝殻を拾い、耳にあててみた。
何も聞こえなくて、泣きそうなくらい切なくなる。
あっ、潮の香りがする
気がつくと、両手の指で包むようにした貝殻を唇の上にあてがっていた。
何かが懐かしくて・・・・、私はそのまま瞳を閉じた。
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