第一章

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 その笑顔に下人はほっこりとするも、ツキリと胸が痛んだ。(血など繋がってないが、もう三年か…。早いものだ)首の裏を掻き、弥彦の手を引いた。  道に人が溢れ、声が飛び交う中、下人は弥彦を抱き上げ、人と人との間を縫うように抜ける。クイクイと下人の袖が引っ張られる。 「父上、お腹が減ってしまいました」  視線を向けると弥彦が眉を下げ、恥ずかしげに腹を押さえていた。 「そういえば、食べていなかったな。あ~、あそこで食べるか」  そう言って下人は近くの門の階段に向かった。皮肉にもそこは下人が盗人に成った場所である。下人は僅かながら眉間に皺を寄せた。 「父上?どうしましたか?」 弥彦が気づかし気に聞く。少し立ち止まっていたようだ。 「いや、気にするな。懐かしいと思っていただけだ」 下人は弥彦に向かって微笑み、頭を撫でた。弥彦は照れ臭そうに、けれど、嬉しそうに目を細める。それに再び胸がツキリと痛んだ。どうしようもないほどに後ろめたさが胸中に渦巻き、下人の足取りが重くなる。羅生門の上であの老婆が近くで嗤っているかに思えた。 下人の首元で、剥ぎ取りが子守かい? と嗤いを含みながら囁く。ねっとりと絡みつくような錯覚に下人は身を震わした。それに弥彦が父上?と首を傾げた。気にするなと下人は弥彦の背中を軽く叩いた。
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