7人が本棚に入れています
本棚に追加
6月、梅雨、真っ只中のことだった。
土砂降りの雨の中を私は傘もささないまま歩いていた。
「………」
降り注ぐ雨粒の雫は、私を容赦なく濡らしていく。
雨の日、それは私にとって憂鬱な日になる。
一年前、大好きな彼氏に別れを告げられた。
嫌だと、別れたくないと抗議した、だけど、彼氏は私を置き去りしてどこかに消えた。
それから、一度も会ってない。
携帯の番号も変えられて連絡もとれない。
どうしようもない拒絶だった。
付き合い始めの初々しい時期が懐かしい
私の心にも、一年前から雨が降り続けて心が雨粒で一杯になると、涙となって溢れ出していく。
「どうして?」
一年前から、返ってくることない、私の問い
何度も、何度も、問い掛けた。
「大丈夫ですか?」
不意に後ろから声をかけられた。
「………え」
振り向くと、一人の優男が傘を持って立っていた。
「君は? 誰?」
私が聞くと優男は、困ったように頭をかいて
「要、屋久島要だよ
君こそ、何やってるの、雨、降ってるのに」
屋久島[ヤクシマ]要[カナメ]と名乗った
「雨に打たれたかったの」
あしらうように言って、私は、手の平に落ちる、雨粒を眺めた。
最初のコメントを投稿しよう!