土砂降りの雨の中で

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6月、梅雨、真っ只中のことだった。 土砂降りの雨の中を私は傘もささないまま歩いていた。 「………」 降り注ぐ雨粒の雫は、私を容赦なく濡らしていく。 雨の日、それは私にとって憂鬱な日になる。 一年前、大好きな彼氏に別れを告げられた。 嫌だと、別れたくないと抗議した、だけど、彼氏は私を置き去りしてどこかに消えた。 それから、一度も会ってない。 携帯の番号も変えられて連絡もとれない。 どうしようもない拒絶だった。 付き合い始めの初々しい時期が懐かしい 私の心にも、一年前から雨が降り続けて心が雨粒で一杯になると、涙となって溢れ出していく。 「どうして?」 一年前から、返ってくることない、私の問い 何度も、何度も、問い掛けた。 「大丈夫ですか?」 不意に後ろから声をかけられた。 「………え」 振り向くと、一人の優男が傘を持って立っていた。 「君は? 誰?」 私が聞くと優男は、困ったように頭をかいて 「要、屋久島要だよ 君こそ、何やってるの、雨、降ってるのに」 屋久島[ヤクシマ]要[カナメ]と名乗った 「雨に打たれたかったの」 あしらうように言って、私は、手の平に落ちる、雨粒を眺めた。
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