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期待していなかったけど、要くんの住居はアパートの一室だった。
お世辞にも、綺麗とは言えないボロアパート
雨に濡れたアパートは、晴れてる日、以上に萎れてるイメージがあった。
(まぁ、晴れてる日に来たことなんてないけど)
内心、ツッコミを入れつつ
「ここだよ」
鍵を開けて手招きする。要くん
「おじゃまします」
水滴がポタポタと、服から滴り落ちる、このままじゃ部屋が水浸しになってしまうから、玄関先で立ち止まる。
「あ、すぐにタオル持ってくるから」
要くんは部屋の奥から、一枚のタオルを持ってきて、私に手渡した。
軽く、髪や腕を拭いつつ、あることに気がついた。
(透けてる)
雨粒でしっとりと湿った衣服は薄く透けていた。
「ねーねー、要くん」
「え? 何?」
「よーく見て、ね、よーく見るの」
私をまじまじと見つめる。要くん、数秒、遅れてポッと赤くなる。
うふふふと、意地悪な笑みを見せながら
「どうしたの、要くん」と聞く。
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