土砂降りの雨の中で

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相変わらず、雨は降り続けているようだった。 さんさんと窓にたたき付ける、雨音が聞こえ、締め切られた、室内 一年前のことを、思い出した。 長い、沈黙のあとに彼氏から別れを告げられたのだ。 (あの日も、雨、降ってたっけ) 思い出すと、やっぱり泣けてくる (あー、ほんと、涙もろい) 「どうかした?」 「なんにもないよ」 「泣いてるのに?」 「え………」 目元を拭うと、涙が溢れていた。 「泣きたいなら、泣けばいいよ いっぱい泣いて、すっきりしなよ」 (なんで…… なんで、こんなに優しくするの? やめてよ、つらいから) 俯く、私を要くんはそっと抱きしめた。 「泣き顔、見られたくない?」 (抱きしめてから、言わないでよ) 私は、言えないまま、心の中で呟いてコクンと、頷く。 「よしよし」 頭を撫でる、要くん 「うぅ……うぅぅぅ」 要くんの優しさが伝わって、とめどなく、涙を流した。 慰めてくれる人もいた 励ましてくれる人もいた 親身になってくれる人も、気遣う人も、 敢えて、距離をおく人もいたけど 泣かせてくれる人はいなかった 要くんの優しさが、素直に嬉しかった。
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