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たけしちゃんはね、あの子は本当はヤンキーなんて柄じゃあないんです。
両親が共働きだったせいか、おばあちゃんっ子でねぇ。
昔、まだたけしちゃんが4歳の頃、こんなことがありました。
たけしちゃんは同世代の他の子たちと遊ぶことより、一人で遊ぶことを好んでいました。庭の草花を労わったり、虫を観察したり。そしてよく私とお喋りをしてくれました。
その日も縁側でたけしちゃんが庭を駆け回るのを眺めているときでした。
「おばあ!おばあ!俺の秘密基地、おばあにだけ見したげる!」
父親似の目尻の下がった大きな眼をキラキラ輝かせながら私の手を取りました。
だけど、私の息子は遅くに授かった子で、たけしちゃんが産まれたときには私はもう70歳を超えていました。
「ああ…たけしちゃん、おばあはそんなに早くは歩けないよ」
腰を浮かせながら私が言うと、叱られたような切ない目をしてから「ごめんね。おばあごめんね。」と泣きだしてしまったのです。
まだわがままが言いたい盛りの歳なのにこの聞き分けの良さ。
たけしちゃんは心がとても優しい子でした。
小学校に上がる頃には膝が悪い私を労わって、いつも優しい目をして「いつか俺がおばあのこといろんなところにつれてってやる」って照れくさそうに言ってくれました。
そんなたけしちゃんも中学生になった途端、極端に顔を合わせなくなりました。
寂しい気持ちもありましたが、私も人の子の親。
息子にもそんな時期はありましたから、強要するようなことはしませんでした。
後に嫁から聞かされて知ったのですが、その頃のたけしちゃんは顔や体に痣や傷をつくって帰ってくることが多かったそうなのです。
もしかすると、老い先短い私に心配をかけぬようそうしたのかもしれません。
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