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やがて大通りを過ぎて住宅街へとやってきた。もう数百メートルあるけば孝太郎の自宅だ。しかし、未来の足が止まった。
「どうした?」
薫が話しかけても下を向いたまま立ち尽くしている。そして、傘も落としうずくまってしまった。
「おい!大丈夫か!?」
近づいていくとかすかに体が震えているのがわかった。何かを察し薫がタブレットを見て見るとここが未来の事故現場だったことがわかった。
薫がそっと未来を抱き寄せる。
「そっか、彼氏の家行く途中だったんだな。ごめんね、もっと気を使うべきだった。」
幽霊といっても生前と何ら変わらない事に未来は死んだという現実感がなかった。それが、事故現場をみて思い出してしまった。
「あたしが死んだのなんかずっと昔で忘れてたよ。」
暫くして落ち着いた未来がゆっくりと立ち上がる。若干の不安を抱きつつ薫が聞く。
「大丈夫か?」
「はい…大分落ち着きました。」
「やっぱりやめとくか?」
「いえ…合いたくなっちゃいました。」
そう言いながら未来は笑った。
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