ムーブ1

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その人物は逆立ちの状態を維持しながら、ずっと跳ね続けている。 透は不思議な物を見る感じでその人物を見ていた。 しかし次の瞬間。 その人物は体を支えていた腕を踏み外し、崖の向こう側へ倒れこんでしまった。 その人物は咄嗟に崖の先端にしがみつき、宙ぶらりんの状態になっている。 危険を感じた透は走り出すと、崖のそばに行き、その人物の腕を掴んだ。 近くに来てみるとわかる、その人物はたくましい腕をした男性だった。 「大丈夫ですか!」 透は呼びかけながら、一生懸命男性の腕を引っ張った。 「うおおお!!」 とその男性は唸りを上げると、透の引っ張りを支えにして一気に崖を這いあがった。 二人とも崖の上にへたり込むと、首をもたげながら「ぜえぜえ」と息を切らした。 息が落ち着いたところで、透が男性の方を見ると、男性はにっこり笑いながら「ありがとう」と言った。 透も笑顔を返して。 「いえいえ、危なかったですね。  ところで、こんなところで何をしてたんですか?」 と聞いてみた。 「修行・・みたいなものだな。  筋力だけじゃなくて精神面も鍛えれるトレーニングだよ」 「トレーニングですか。  なるほど、それで崖の先端で逆立ちしていたんですね」 男性は少しムッとすると。 「あれは単なる逆立ちではないんだ、ラビットという技なんだよ」 と言った。 「技・・・?  体操かなにかですか?」 「いや、ブレイキングというストリートダンスの一種だ」 「ブレイキングですか・・・なるほど」 透には知らない言葉だった。 「厳密な意味は違うが、ブレイクダンスと呼ばれることもある」 「あ!それなら知ってます!」 勢いよく答えてみたが、透は言葉しか聞いたことがなかった。 一生懸命、頭の中を探してみるが、ブレイクダンスがどんなものなのか出てこない。 そんな透の様子を見ていた男性が、手招きをすると、透を崖から離れた場所に呼んだ。
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