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男性は手で地面を触ると、何かを調べながら独り言を言った。
「柔らかい地面だと、やりにくいんだが・・・」
男性はそう言ったあと、持っていたリュックサックからローラースケート用のヘルメットを取り出し、頭を地面につけ、イスラム教の礼拝のようなポーズになった。
そのポーズから両足を伸ばし、三角倒立になると、足をVの字に開き、その足を振って体全体を回転させ始めた。
みるみる回転のスピードが上がっていき、回転のスピードがある程度変らなくなったところで、体を支えていた手を離し、頭だけで体を支えて回転した。
そして、Vの字に開いていた足を閉じていくと、体全体が一本の棒のような形になり、徐々にスピードを上げていき、フィギアスケートのスピンのように凄まじい速度で回転した。
最後に体を回転させながら倒れこむと、男性は体を起こしながら透に言った。
「いまのがブレイクダンスの技で代表的なヘッドスピンという技だ。
たぶん、テレビなんかで一度は見たことあるんじゃないか?」
確かに透は今の技をなにかで見たことはあった。
だが、単純にすごいと思うだけで自分には無縁なものだろうと思った。
男性はヘルメットを取るとリュックにしまい、帰り自宅を始めた。
そして、透のほうに近寄ると、手を差し出し握手を求めた。
透は照れながらも差し出された手を握った。
「俺は謙崎覚悟、よろしくな。
そして握手はこうだ」
覚悟はそう言うと、握手をしている手の指を引っ掛けながら「パンッ」と音をならして、手を離した。
そして離した手で拳を作ると、透の前に差し出した。
「?」となった透を見て。
「ほら、お前も」
と言って透に拳を作らせ、その拳に自分の拳をコツンと当てると、透に背を向けて山道を下って行った。
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