契約書No.1

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俺は咄嗟に彼女に手を伸ばすが、その手は彼女を掴むことなく虚しく空を切る。 その瞬間、右足が宙に浮いた気がした。 彼女はフェンスにしがみついたまま驚いた顔で俺を見ている。 急激に体が斜めになり、いつの間にか俺の目線は彼女のミニスカートと同じ高さになっていた。 あ……れ? …… ………… やだ。まさか俺…… 落ちてんの? 落ちていると確信したのは、彼女のパンツが見えたくらいだった。 やべぇ……俺、死ぬのか? 正直、あまり実感がわかない。そこまで考えるには時間が短かすぎた。 体全体に感じる重力加速度と空気抵抗。 空気抵抗が重力加速度に勝てる訳もなく、俺の体はどんどんスピードを増していく。 なぜだか気持ちが良い。 空を飛ぶ夢を見ているような気持ち良さだ。 天を仰ぎながら目を閉じると、俺はそのまま暗い暗い闇の中に墜ちていった。
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