契約書No.1

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ふと気が付くと、俺は人込みの中心に立っていた。 よく分からないが、全員俺を避けるように周りを囲んでいる。 そして、どれもみな引き攣った表情をしていた。 その中の一人が「救急車!」と叫んだ。 ざわめく人々。 あれ……そういえば俺、今落ちてたよな? 首を傾げ、ビルの上を見てから順番に足元を見ると、誰かが地面の上で俯せになっていた。 見慣れたスーツ。オーダーメードで五十万はしたスーツだ。 あれ?……俺? その姿に血の気が引く。 「やっぱ、死んだのか……俺は」 そうつぶやいて、その場に座り込むと、後ろから声が聞こえた。 「その通り。あんた、物分かりがいいね。気に入ったよ。しかも今までで最速記録だ」
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