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閑話休題
天野家には『相棒』と呼ばれている
クマのぬいぐるみがキッチンカウンターの
リビング側の端の椅子に座っている。
高さは座ってる状態でも50センチほどだ。
彼?は美鈴の友人から
翔の2歳の誕生日に贈られた物だ。
その友人が翔に渡すときに
「このクマさんは今日から翔くんの
『相棒』だよ」
言ったのが始まりである。
かつては幼少期の翔の
冒険にも連れまわされた事がある。
引きずられ、放り上げられ、
引きずり降ろされ、抱き着かれて
立派に翔の『相棒』を務めあげた。
しかし、あの日から彼?は
ここに座っている。
何も言わず、ただ、じっと座っている。
朝には、必ずと言っていいほど
翔の話し相手をしている。
返事を返す事は無いが
ただ黙って翔の話を聞いている。
そして、母子のリビングでの会話や
行動をただ見守っている。
これまで、そうしてきた。
これからも、そうしていくのだろう。
物言わぬ『相棒』は、ただ見守り続ける。
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