第1章

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「…まずい」 「せっかく作って頂いたものです、残さず食べてください」 こんなに美味しいのに… 贅沢が過ぎます! 「…食った」 「まだ一品残っているように見えますが?」 私が作った煮転がし… 「だってまずそうだし」 「…そうですか ではお下げします」 お盆を持ち、襖を開ける 「ご用があればお呼びください」 そう言って襖を閉め、台所へ持って行く 皿洗い、しないと… ―――――――――――――――――― ――――――――――――― 「ったく …何であんな顔したんだよ…」 どうも気になった あのまずそうだった煮物を残しただけだろ 厠に行くため、部屋から出た 向こうから女中が来る…! 俺はサッと隠れた 「ねぇ食べたかい? お夕の煮物!」 「食べたよ! あれは美味しかったねぇ…」 「上様も絶賛したらしいよ?」 「まぁあんなに美味しかったら頷けるわ…」 「政宗様の分の煮物… 奥様が見た目が悪いものしか入れさせなかったんだってさ!」 「いくら嫌いでも酷くはないかい? 形が悪いものはアタイら女中が食べるのにさぁ!」 そう言って女中は去って行った 「お夕…!」 俺は馬鹿だ お夕の気持ちを分かってやれなかった…! ――――――――――――― 「まぁ… 政宗様がお食べにならなかったのかい… せっかく作ったのに…」 「いいんです… こんな不格好な煮物… あの方には必要ないです」 「お夕っ!」 なぜ政宗様がここに…!? 「政宗様、何かご用がありましたか?」 「煮物を食わせろ…!」 「政宗様! こんなところに来てはなりません!」 政宗様の天然痘を恐れている女中が台所から出そうとする 「食うから…! お前が作った物なら食うから!」 「政宗様…」 「お夕! 何とかしておくれ!」 政宗様の煮転がしと箸を手に持って政宗様を縁側へ連れていく 「…すまん 興奮してしまった…」 「大丈夫ですよ さぁ、どうぞ?」 煮転がしと箸を渡す 躊躇せず煮転がしを口に運ぶ政宗様 「…いかがですか?」 「…………うまい」 うまい、と言ってもらえた 「ありがたき幸せ…」 「おいお夕、 敬語はやめてくれ」 えっ… なんで… 「お前はただの女中じゃねぇ! 俺の友達だ!」 「…はいっ! ありがとうございます…」 敬語はなかなか抜けないけど… いつか、普通に話しましょうね! .
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