24人が本棚に入れています
本棚に追加
移動を始めて2日、
今は暗い山道を進んでいた
もうすぐ甲斐だとおっとうは言う
今、私と馬に乗っているのは3人の弟妹
1人の弟はおっとうの馬に
2人の妹は奥州のある家に養子に行った
「夕ねぇちゃん、まだー?」
「夕ねぇちゃんうち手が疲れたー」
「夕ねぇ…」
弟の兵一郎、妹の珠子、千加子の順で喋る
「おっとう!
休憩してもいい?」
「休憩しとき!
このまま道を進むからな」
おっとうは先に進んで行った
私たちは馬から降り、大きな木の根元に座る
「…夕ねぇ」
「どうしたの、千加子」
今の家族の中でも最年少の千加子(7)が私を見つめる
「甲斐ってどんなところかな?」
「きっといいところよ
……きっとね」
「きゃあぁぁあぁああ!」
「珠子!!
夕ねぇちゃん!珠子が!」
珠子(10)の悲鳴と兵一郎(10)の叫び声が響く
「兵一郎!
何があったの!?」
「珠子が…
落ちたんだ…!」
「珠ねぇ…!」
大変!
今は山の中
危ないことは分かっているけど…
「兵一郎、千加子…ここに居なさい」
「夕ねぇちゃん?」
「夕ねぇ…」
心配そうに私を見る2人
「大丈夫、珠子と戻ってくるから
ここで座っててね?」
「「はーい…」」
2人を座らせ、ゆっくりと落ちていったであろう場所を下る
「…ひー…えぐっ…
ゆぅねぇちゃ…うぅ…」
「…珠子?」
倒れていた人影がもぞもぞと動く
身の丈的に珠子だ
「ゆぅねぇちゃん…
うえっ…いたいー…」
「珠子…
痛かったね…
待ってな、ちょっと痛むよ?」
出血している二の腕と掌に
私の着物の裾を破って巻いた
「夕ねぇちゃん…
ありがとう…」
「いいのよ、立てる?」
珠子は立とうとするが足が痛むらしく、立てない
「ごめ、なさい…」
「おいで、おんぶするから」
珠子は私の首に腕を巻き付け、私におぶられる
「上がるよ」
「…ぅん…」
流石に疲れたみたいね
ゆっくり寝なさい…
「っく…!
……っ…ぅっ……!
……っ着いた!」
「夕ねぇちゃん!」
「夕ねぇ!珠ねぇ!」
何とか急斜面を上り、兵一郎と千加子の元に辿り着けた
「はぁっ…
ふぅ…
ただいま…、兵一郎、千加子…」
「夕ねぇちゃん…」
「……」
なんだか2人の様子がおかしい
「あれ…
………馬が」
「夕ねぇちゃんごめんなさいい!」
「馬が逃げちゃった!」
.
最初のコメントを投稿しよう!