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満足げな有紗と康平に対して、佐智子の隣に立つ沖田は「お前ら、何か言うことあるんじゃねーの」と、腰に手を当てた。
「何か言うこと?」
佐智子は沖田の言葉を繰り返して首を傾げた。二人は、浮かべていた笑みを徐々に引きつらせてゆく。
有紗は持っていたケーキを置かせてほしいと言い、それを慎重にテーブルに置くと、空いた両手をあげて、一度康平を見てから佐智子に視線を戻した。
「えっと、佐智子。今から言うことがあるんだけど……、怒らないでくれる?」
「え? な、なに?」
事前にそんなこと聞かれても、と佐智子に不安がよぎる。
「実はその、この――……、康平と付き合うことになったの」
照れたように言う有紗に、佐智子は口をパクパクさせて、二人を交互に見た。康平は「そういうこと」と頷きながら言う。佐智子は額に手を置いて目を瞑り、うーんと唸ってみせると、三人は笑い出した。彼女は目を開けて沖田を見て、
「知っていた?」と尋ねると、肩を竦めて頷く。「いつ? どうして私にだけ内緒に――」
「今日のために。どうせならサプライズにサプライズ重ねようかってなったんだ」
「そんな……私あんな心配したのに」
がっくりと肩を落とす佐智子。
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