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「――じゃあ、今日はここまで。来週レポート課題のこと話すよー。以上」
講義が終了して、レポートめんどくさいと心の中で思いつつ、バッグに物を詰めていた佐智子は肩を叩かれて、振り返った。
「びっくりしたーおはよ。有紗講義出てたの?」
振り向くとそこにいたのは、友人の有紗だった。有紗は佐智子の隣に来ると、バッグを置くなり机に突っ伏して、「今きたの~」いつもより低い声でそう言った。「きもちわるぅ……」
「また呑んだの?」
お弁当とペットボトルのお茶を机にあげて、突っ伏す有紗に尋ねる。
「うん……だって全部奢るっていうしー、医学部で違うやつはやっぱり違うねぇ。金の使い方が」
「そう。ラッキーだったね」
佐智子は苦笑して、お茶を一口飲んだ。
有紗は、佐智子の数少ない大学の友人だ。美人で明るく、人脈が広い。酒豪でしょっちゅう呑んでいるらしく、この様子から見て、昨日も飲み明かしたのは明らかだった。
お弁当を食べる佐智子の隣で、有紗はバナナ味の豆乳をグビグビ飲みながら携帯を眺めていると、そうだ、とストローから口を離した。
「佐智子さぁ、今度の金曜日空いてる?」
「金曜日? 空いてるよ」
「ここ最近ずっと佐智子と飲んでなかったから、金曜日飲もうよ」
「……有紗の身体は大丈夫なワケ?」
目を細めて訊くと、有紗は携帯を机に置いて、空いたその手でVサインを作った。
「よゆーよゆー」
「それなら、大丈夫だよ」
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