確信

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「なんで逃げんだよっ、待てって」 少しずつ縮まってくる富田との距離に、焦りを感じながら、あたしはひたすら走った。 もう、あたしのマンションの目の前。 「待てよっ」 腕を掴まれて、あたしは立ち止まる。 浅い呼吸を繰り返して、乱れを整えようとするけど、全然落ち着かないのは きっと…富田の手が、あたしの左手首に触れてるから。 「離して…」 「やだ」 「離して…」 「やだ」 何も答えられなくて、ただ下を向いて俯くあたし。 「なー、なんかあった?」 「別に…何もない。も…痛いから離して…」 ゛あぁ悪ぃ ″ そう言ってゆっくり離れていった富田の手。 「あー、これ、釣り」 富田のポケットから出されたそれは、あたしが出した1万円札。 「いらない」 「何でだよ、お前いつも金がねーって騒いでんだろ」 「とにかく、いらないから。じゃーね」 差し出されたお札を手で払ってから、マンションの中へ向かって歩き出した。 .
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