14218人が本棚に入れています
本棚に追加
階段を駆け上がって、震える指先で鍵を開けた。
玄関の中に一歩入ってドアを閉めようとした時。
「何、怒ってんだよ…」
富田の足がドアにねじ込まれる。
思いっきりドアを引くと、富田の怒った声。
「痛ぇーよ、バーカ」
言いながらドアを開けた富田が玄関の中に入った。
「怒ってないから、帰って」
パタン、ドアの閉まる音がして、廊下の先から少しだけ入る灯り。
暗闇の玄関の中で、瞳を凝らして富田の顔を見上げた。
黙って立ったまま、何も言わない富田。
「富田…ホント、帰っ…ンッ…ヤメッ…」
いきなりのキスに、胸を叩いて抵抗したあたしの手を押さえて、壁に押し付けられたまま、何度も唇を奪われる。
「…ンンッ…ヤッ…」
首を振っても、追いかけてくる唇。
何度か繰り返すうちに、もう、抵抗する事すらも出来ないぐらい、そのキスだけであたしの身体は疼き出す。
自分から富田の首に腕を回して、唇を重ねた。
「富田……シよ…」
嘘でもいい、抱かれてる時だけは…愛されてる錯覚に溺れる事が出来る。
二人で一緒に堕ちて行く事が出来るから。
富田は、あたしの言った言葉に薄く笑って部屋に入って行った。
.
最初のコメントを投稿しよう!