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「これ…どうかな?」 会議室の大きなテーブルに、あたしは自分のバッグからスケッチブックを取り出して広げる。 「お、やるじゃん…」 目の前の富田は スケッチブックを覗き込みながら、顎に手を置いて考える仕草をした。 あたしがデザインしたのは、メンズライクなラフなシャツ。 真っ白と、デニムの2色展開。 自分がシャツ好きなのもあるけど、10月の発売だから、Tシャツは考え直して止めた。 外国雑誌の街角スナップを見ていたら、そこに彼から借りて来たようなラフなシャツを、サラッと着てる女性が載っていて素敵だと思ったから。 「サイズ感は… ゛free ″ だったらMって感じで。あんま大き過ぎないように、女性らしいラインで作りたい」 「プリントなし?」 富田はいつになく、真剣な眼差しで。 あー、やっぱ、仕事では この人には敵わないな、なんて思った。 「プリントは極力入れたくない。あくまでシンプルに。 だから、フロントの左下にダブルネームのタグ入れて、バックは襟下の布の切り替えん所に、んー…なんかシルバーの糸とかで刺繍とか? ごめん…そこはまだ、考えてない」 「や、いーよ、上出来だろ。ちょっと一服しに行くぞ」 富田は、そう言って笑って席を立った。 「あ、うん…」 さっさと会議室を出て行った富田の後を追って、喫煙室に向かった。 .
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