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「シワ加工の白シャツと、藍染のシャツか…」
腕を組んで目を閉じてしまった富田を見て。
あー、ダメか…やっぱfreeのブランドイメージもあるし…。
あたしはそんな事を考えて、手にした缶ビールを飲み干した。
テーブルにある缶ビールに視線を移す。
空になった缶を潰す 富田の ゛癖 ″ 。
それを見て、あたしは立ち上がって冷蔵庫に向かった。
「はい」
目を閉じた富田の頬っぺたに冷たい缶を押し当てる。
「冷てっ…おー、サンキュ」
あたしは、何だかこれからの自分のデサイナーとしてのスタンスに自信をなくして、溜め息を吐いた。
「あーぁ」
プルタブを開けたビールをテーブルに置いて、ベッドの上に仰向けになって天井を見つめた。
デサイナーとしての腕は富田にはある。
やっぱり、あたしは富田にはいつも敵わなくて。
このまま、デサイナーとしてやっていけるのか?
歳を重ねれば、結婚でもしない限り、もちろん再就職先なんて すぐに見つかる訳もない。
母親に言われたお見合いでもして、永久就職の道以外、あたしに残された選択肢はおそらく ない。
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