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「頑張り過ぎなんだよ、お前は」 「そんな…事…」 降ってきた声に顔を上げると、富田がすごく優しい顔であたしを見てた。 「プレッシャーとかさ、あんだろ?」 「…うん」 「俺だって…すげぇあるよ。押し潰されそーになる時も…まぁ、ぶっちゃけ多々あるしな ハハッ」 「富田も…そんな風になるんだ…」 多かれ少なかれデサイナーは、みんなプレッシャーと戦ってる事は解ってた。 だけど、富田ぐらい腕のあるデサイナーでも、プレッシャーに押し潰されそうになる事があるなんて、思ってもみなかった。 「そら、なるだろ。あんだけ会社で完売記録誉められりゃ」 「そっか…そーだよね…」 「だからー、お前も、頑張り過ぎんなって事だ。お前が頑張ってんのは解ってるから、な?」 今まで見た事もないくらいの、笑顔をあたしに向けて。 「無理すんなよ?辛くなったら、愚痴くらい聞いてやるから」 そう言って、あたしの頭を2回優しく叩いて冷蔵庫に向かった。 その後ろ姿を見つめながら、あたしは多分、顔を赤くした。 顔から火が出そーなくらい熱い。 富田が認めてくれた、あたしの事を解っててくれた、ただそれだけで嬉しかった。 .
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