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「ほら」 富田に手渡された缶ビールを受け取った。 「今日は飲んで、いっぱい愚痴吐けよ、愛しの歯医者には愚痴溢せないだろ?」 ねー、富田。 あたし、歯医者の遥君とは何もないんだよ? あんたに、こんな気持ちになってんの解ってる? 「何黙ってんだよ…歯医者とケンカでもしたか?お前…素直じゃねーしな ハハッ」 そーだよ、素直じゃないんだ、あたし。 だから、あんたにも素直に言えない。 「おまっ…何泣いてんだよ…」 「わかんないや…」 人は 恋をすると臆病になる。 嫌われたくない、1分でも1秒でも長く傍に居たい。 例えそれが、叶わない恋だと解っていても。 愛して欲しい、その瞳に あたしを写して欲しい。 傷付くのが怖い、もし傷付けられたとしても…嫌いになれない自分が怖い。 あたしは、弱くて、情けないくらい臆病で、バカみたいに狡い。 「ホントに歯医者とケンカしたのか?」 もー、優しくしないでよ、富田…。 「…うん」 「……泣く程…好きなんだな、歯医者の事…」 「…うん…そーかも…」 .
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