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「ん…」 重たい目を開けると、富田の腕の中に居た。 あたし…泣いたまま寝ちゃったんだ…。 てか、富田も 寝てるし…。 最近、デザインの事もそーだけど、富田の事ばかり考えて眠れない夜が多かった。 そっと、あたしに回る腕を引き剥がそうとしたら、目を開けた富田。 「…起きた?」 あたしの好きな、少し掠れた声。 「あ、ごめん…寝ちゃった」 起き上がろうとしたあたしを、富田の手が遮る。 「お前疲れてんだよ、もう少し横になってろ」 「……うん…」 その言葉とは裏腹に、抱き寄せてくれた その手が、すごく優し過ぎて苦しくなって、あたしは また瞼を閉じた。 服を着たまま小さなベッドで抱き合うなんて、まるで恋人同士みたいで、なんか擽ったくて。 あたしのいつもより早い心臓の音、富田に聞こえてしまってる? 富田の左の胸から聞こえる音は、あたしより少し遅くて、何だか切なくなった。 抑えようとすればする程…早くなる脈。 この至近距離で、富田に聞こえてない訳がない。 .
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