ささやかな幸せ

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「よっ、お疲れ」 後ろの扉から現れた富田は、あたしの肩を軽く叩きながら隣に座った。 「お疲れ…」 あたしは、シャツのタグをぎゅっと握った。 「おー、やっぱ、いいな」 大きなテーブルに置かれた、1枚1枚が微妙に違う柄の藍染のシャツを手にして、富田はあたしに笑顔を向けた。 笑顔を向けられただけで、あたしの心は満たされて、また胸の奥がきゅうってなる。 「よく頑張ったな」 言いながら、あたしの頭に手を置いた富田に、顔が熱くなる。 「まぁ…うん…」 「あれー?…まこさんと富田さんて…」 一緒にやり遂げたデザインチームの恵美ちゃんが、ニヤニヤしながらあたしと富田を交互に見る。 「ちょっ…誤解されるよーな事しないでよっ」 頭に置かれた富田の手を、あたしは引っ剥がして言った。 「なーんだ、まこさんと富田さん、お似合いなのになー」 「恵美ちゃん!!富田も、何とか言ってよ!!」 「あー、悪い悪い」 しれっとした顔で、何もなかったよーに富田はまたシャツを手にした。 何なの…、もー、心臓に悪い。 .
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