ささやかな幸せ

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先週のサンプルが出来上がった日の夜、富田の部屋で一緒に食事をした時。 富田が外してテーブルに置いたクロムハーツの指輪。 「あ、可愛い…」 言いながら、自分の中指に嵌めたあたしに。 「お前じゃ緩いだろ」 富田は、そう言って少しはにかんで笑って。 「んー、緩い、でも可愛いー」 「使っていーよ」 「ホントに!?」 「あー、ホント、なくすなよ」 「うん、わかった」 富田から借りた指輪。 その日から、あたしはずっと右の中指に嵌めてる。 右の中指にしたのは、煙草を吸う時に必ず視界に入るから。 それを目にする度に、ほんの少し幸せな気持ちになれる、なんてホントに安上がりな女。 .
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