ささやかな幸せ

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「眠いんだろ?早く寝ろよ」 「なんでー、寝たら帰る気でしょ?」 「泊まってくから、寝ろ」 「じゃー、こっち、早くー」 床に座って煙草を吸う富田に、あたしはベッドの上から手を伸ばした。 「あー、うるせーなー」 そんな事を言いながらも、富田はベッドに来て腰かけて、あたしは富田を見上げた。 「富田ー、ありがとーね」 「あ?何が」 「んー、何となく?アハハッ」 「フッ…何だよ、それ」 笑いながら、あたしの頭を優しく撫でて。 「寝ろ、酔っ払い」 「一緒に寝よーよ」 ゛ったく… ″ 小さく悪態をついた後、ベッドの中に入って、あたしを抱き寄せた。 気持ち良く酔ったあたしは、いつもなら言えない事も言える気がした。 「ねー、富田」 「んー?」 目の前にある顔は、もう目を閉じてて、あたしは今にもくっついちゃいそーな瞼を一生懸命開く。 「……き…」 「あ?」 ゆっくりと見えたブラウンの瞳に、あたしが写る。 「んー、何でもない、おやすみー」 目を閉じた後、唇に触れるだけのキス。 「おやすみ、…まこ」 あたしの好きな少し掠れた低い声が聞こえた。 .
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