ささやかな幸せ

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「ん…」 目が覚めると、真っ暗だった筈の部屋は少し明るくなり始めてて、カーテンの隙間から見えた空は明け方の色をしてた。 ふと、隣の富田を自分の瞳に写した。 スヤスヤと眠る綺麗な顔を見つめると、あたしの心臓の音はすぐに乱れ始める。 そっと、目の前の頬っぺたに触れて。 男の頬っぺたって、こんなにすべすべしてたっけ? 富田、髭、あんま濃くないんだね。 あぁ、あたしの好きな…唇。 親指で唇をゆっくりとなぞった後、そこに触れるだけのキスを落とした。 「……好き…」 言えないや…、やっぱ。 「んー…」 動いた富田にびっくりして、慌てて目を閉じて寝たフリ。 富田は、あたしを抱き寄せてから、また寝息を立てて眠りについた。 .
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