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だらだら過ごせば、あっという間に外は太陽が隠れ始める。
「お前、今日は?」
テーブルの上の、デリバリーピザを口に頬張りながら富田はあたしを見る。
「ん?何が?」
「だからー、今日は歯医者と会うのかって聞ーてんだよ」
「あぁ、会わないけど」
あれから遥君に食事に誘われたけど、コラボのデザインで忙しかったのもあって何度も断った。
「なー、上手くやってんの?お前、バレないよーにしろよ」
「何を?」
富田は、はぁー、と大きな溜め息を吐いて冷蔵庫から缶ビールを取った。
プルタブを開けて、一気に流し込んでから。
「俺らの事、バレたら困るだろ?」
あー、そっか。
富田は…困るよね…。
あたしは遥君にバレても何も困る事はないけど。
「んー、わかってる…富田も、彼女にバレないよーに」
あの夜、富田のマンションから一緒に出て来た、綺麗な女の顔を思い出した。
あーゆー、清楚な感じがタイプだったんだ。
自分と、あまりにもかけ離れ過ぎた容姿に、あたしは笑いが込み上げる。
「何…頑張ってんだろ、あたし…」
思わず口から漏れた、あたしの独り言に富田は怪訝そうな顔付きをした。
「お前、なんか勘違いしてねー?」
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