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「あれ、俺の妹だから」
「はぁー!?」
「あー、うっせーよ」
大声を出したあたしに、少し呆れた表情で。
「だって…、由、今日はありがとって…言ってた。そんな、嘘つかなくていーよ」
酔ってたけど、確かに聞こえた ゛由 ″ そう呼ぶ声。
「だからー、妹、双子の妹だって。死にたいってメールがきたの」
「へっ? だから、あの日…慌てて帰ったの?」
「そーだよ。旦那と喧嘩して家出したって言うから、あのバカを迎えに行ったんだよ」
「そーだったんだ…なんか、世話の焼ける妹だねー」
あたしの言葉に、富田は自虐的に笑った後、今まで あたしの知らなかった富田の事を、沢山話してくれた。
小学生の頃に、事故で両親を亡くしてから、バラバラに親戚の家にたらい回しにされた事。
それが嫌で、何度も家出を繰り返した事。
高校生になって、アルバイトをしながらボロボロのアパートで妹と一緒に暮らした事。
でも、その時が一番、幸せだったと笑っていた。
「なんで、デサイナーになろーと思ったの?」
あたしの問い掛けに、富田はゆっくりビールを飲み干して缶を潰した。
「んー、何でだろーな、死んだ親父がデサイナーだったからかな…。親父達が死んだ後、きったねー服しか着せてもらえなかったし」
少し寂しそうに呟いた後、冷蔵庫に向かった富田の後ろ姿を見つめた。
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