忘れかけた傷

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「お待たせっ……」 約束したいつもの居酒屋に行くと、富田が居た。 「よぅ!!お疲れ」 「なんで…富田が居るの?」 「居ちゃわりーかよ」 言いながら、煙草を手にした富田は、ジッポをポケットから出した。 あたしも、煙草吸お…。 富田の向かいの席に座りながら、バッグの中から煙草を出す。 「ねー、和美は?」 「あ?帰った」 「はぁ!?」 「だーかーらー、帰ったって」 富田の話しによると、一緒に飲んでたのに男からの電話で、帰ったらしい和美。 あたしは『ぶさけんな』心の中で悪態をついた。 「ビール?」 「あー、うん…」 和美の居ない空間に、富田と2人っきり。 なんとなく、そわそわするあたしは、煙草を吸いながら呼吸を整えた。 「サンプル、出来はどー?」 「うん、なかなか良かった、かな」 「そっか」 「富田は?サンプル、あがってきた?」 「あー、ボチボチだな」 「ふーん、そっか…」 ゛お待たせしましたー ″ 店員が、2つのビールを持ってやって来た。 「お疲れ」 富田が差し出したジョッキに、あたしは慌ててジョッキを手にして乾杯した。 .
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