忘れかけた傷

7/15
前へ
/340ページ
次へ
「お金は…?」 店の外にそのまま連れ出されたあたしは、富田と繋いでる左手を見ながら言った。 「おせーから払っといた、次、奢れよ」 「…うん」 それから、無言のまま大通りを歩いた。 信号で足を止める度に、あたしは富田の大きな背中を、少しまだぼやける瞳でぼんやりと見てた。 「アイツ…昔の男?」 家の近くの住宅街に入った所で、富田は足を止めて、振り返った。 「…うん」 あたしは富田の視線を感じながら、アスファルトを見る。 「…子供…出来たのか?」 「……そう」 .
/340ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14222人が本棚に入れています
本棚に追加