忘れかけた傷

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友達のお見舞いに行った病院で、あたしとたけちゃんは出逢った。 『…ライター借りてもいいかな?』 『あ、どーぞ』 病院の外にある喫煙所。 ベンチに座って、煙草を吸ってたあたしに、たけちゃんが声を掛けてきた。 『ありがとう』 言いながら向けられたのは、大人の男を感じさせる色気のある笑顔だった。 ゛どんな人だろ ″ そんな事を考えながら、灰皿に煙草を投げ入れて、帰ろうとベンチを立った。 『少し、話さない?』 穏やかに降ってきた優しい声に、あたしはすぐベンチに舞い戻ってた。 会ったばかりなのに、どんどん惹かれていくのが自分でも解った。 『これ、連絡先。良かったら今度、ご飯でも行こう』 『うん…連絡するね』 たけちゃんから渡された名刺を、家に帰ってから、何度も何度も眺めて。 我慢できなくなって、次の日、仕事帰りにあたしから電話を掛けたら、偶然たけちゃんも同じ駅に居て、あたしを見つけて駆け寄ってきた。 『連絡くれないと思ってた…嬉しいよ』 そう言って、あたしの唇を優しく奪った。 .
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